2025.04.14
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離職者の給付制限期間さらに短縮 人材流出増加につながる可能性?
近年、働くことに対する価値観やライフスタイルが多様化していることを背景に、2024年5月に雇用保険法が改正されました。雇用保険の適用拡大や教育訓練給付金の拡充など、離職者の増加が予想される給付制限期間の短縮対策について。
◆雇用保険法改正の趣旨と概要 労働者の学び直しの支援を強化
雇用保険法が改正された趣旨には、労働者がその希望と状況などに応じて持っている能力を十分に発揮できるように、キャリア形成の支援を強化することにあります。このため、今回の改正点は雇用保険の適用拡大で、雇用保険の被保険者の要件のうち週所定労働時間が、20 時間以上から10時間以上に変更されます。もう一つの改正点は教育訓練やリ・スキリング支援の充実で、より一層強化する観点から、教育訓練給付金が拡充されます。また、労働者が安心して再就職活動を行えるように、 基本手当の給付制限期間が見直されます。
まず、教育訓練給付金の拡充では、インセンティブ強化のために、2024年10月1日より教育訓練給付金の給付率の上限が受講費用の70%から80%に引き上げられています。また、労働者が生活費などの不安をなくするため、教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一 定割合を支援する教育訓練休暇給付金が2025年 10月1日から創設されます。
そして、基本手当の給付制限期間については、2020年10月1日より正当な理由なく自己都合により離職した場合の給付制限期間が2カ月に短縮されていますが、2025年4月1日からさらに見直しが行われることになります。
◆給付制限期間が原則1カ月に短縮 企業は人材流動化への対策が必要
この給付制限期間は制度の濫用を防ぐために設けられているもので、正当な理由がなく自己都合によって退職したなどで、失業していても一定の期間は基本手当の支給が停止されます。現行では、自己都合退職者に対しては、原則2カ月間(5年以内に2回を超える場合は3カ月間)の給付制限期間が設けられています が、ハローワークの指示に基づいて「公共職業訓練等」を受講した場合には、この給付制限が解除 されます。
これに加えて、今回の改正により、離職日前1年以内または離職後に、みずから教育訓練を行なった場合にも、給付制限が解除されることになります。あわせて、自己都合離職者の給付制限期間が原則1カ月間(5年間で3回以上の場合は3カ月間) に短縮されます。
改正の影響は、労働者だけでなく企業にも及びます。教育訓練やリ・スキリング支援の充実により、労働者は自己のスキルアップやキャリア アップを求めて転職活動をしやすい状況になったといえます。一方、企業にとっては労働力不足の状況にあって人材の流出の増加につながるおそれがあります。そのため、キャリアパス制度の導入で個人の希望を反映させる仕組みを強化するなど の対策を講じて人材の定着を図る必要があります。 今回の改正によって、労働者はこれまでに比べて 離職の選択をしやすくなった反面、企業においては人材の流動化が激しくなることが想定されます。 必要な対策を実施して、人 材の流出を防ぐように努めましょう。