2025.10.07
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どこまでが労災か――その境界線とは 企業が負う労務リスクを考える
近年、在宅勤務、副業・兼業、直行直帰など、働き方が多様化するなかで、従業員から労災の申請があったときに、労災にあたるのかどうか悩むケースが増えています。
働き方が変われば労災のとらえ方も変わり、企業が気づかぬうちに労災のリスクを抱えている可能性もあります。
今回は、労災の認定基準や労災認定により企業が負うリスクなどを説明します。
◆労災と認定される基準は2つ 業務遂行性と業務起因性
労働災害(以下、労災)とは、「業務上の事由 や通勤による負傷、疾病、傷害、死亡」のことをいい、主に「業務災害」と「通勤災害」の2つに分けられます。
労災として認められると、労働者は療養や休業、傷病、障害などに対して、保険給付を受けることができます。
業務災害と認定されるためには、傷病などと業務との間に相当因果関係があることが必要で、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの要件から判断されます。
業務遂行性とは、傷病などが業務中に発生したといえるかという要件で、就業中に限らず、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下や管理下にある状態にあれば、業務遂行性が認められます。
業務起因性とは、業務が原因となって傷病などが発生したといえるかという要件で、業務遂行に伴う危険が現実化したものと経験則上認められることが必要とされています。
一方、通勤災害と認定されるためには、労働者の行動が通動の要件に該当することが必要とされています。
労災の認定上、通勤とは、労働者が、就業に関し住居と就業の場所との間の往復などの移動を、合理的な経路および方法により行うこと(ただし、業務の性質を有するものを除く)と定義されています。
近年では、在宅勤務、副業・兼業など、働き方が多様化しているため、傷病などが労災にあたるのかどうかわかりづらいグレーゾーンに位置づけられるケースも増えています。
たとえば、在宅勤務中に手足を負傷したり気分が悪くなったりしたときなど、業務起因性があるのか、私的な原因によるものなのか判断しづらい場合があります。
◆労災認定により企業が負うリスク 労災への備えを見直すことも必要
業務上の傷病などについて労災が認定されると、企業は次のようなリスクを負うことになります。
①従業員から損害賠償請求される可能性がある
従業員は労災保険の給付を受けたとしても、慰謝料などを求めて訴訟を提起することがあります。
②従業員の解雇が一定期間制限される
労災による治療のために従業員が会社を休業している期間中およびその期間終了後30日間は、例外的な場合を除いて、労働基準法によって解雇が禁止されています。
③労災保険料が上がることがある
労災保険の支払実績に応じて保険料を増減させるメリット制を適用している場合、労災認定により次年度以降の保険料が増額されることがあります。
④対外的なイメージが悪化する可能性がある
重大な労災事故は企業のイメージダウンにつながり、顧客や取引先を失う場合もあります。
⑤社内のモチベーションが低下するおそれがある従業員からの企業の労務管理体制などに対する信頼が低下することにもつながります。
そこで、働き方の多様化に伴い、労災への備えも見直す必要があります。
ポイントとしては、在宅勤務規程や副業規程などを整備し対象範囲を明記すること、労災発生時の初動における報告体制を構築し対応マニュアルを整備すること、業務日報や勤怠管理システムなどによって労働時間と作業内容を可視化することなどがあげられます。
労災に「備えていなかった」ことで、企業が後手に回る危険性があります。
労災かどうかの境界を「あいまいなまま」 にしないことが重要で、社内規程やルールの整備がトラブル防止の第一歩です。
ご相談は、ひまわり社会保険労務士法人へお気軽にお問い合わせください。
